シーリング業界を担うマサルの技術力②
サッシ・ガラスで構成されるガラスまわりの目地では、台風による面外変形と地震による面内変形に耐えることが要求される。
従来、この目地のバックアップ材としてクロロプレンゴムまたはEPDMゴムなどのロープが使用されていた。しかし、そのためにシーリング材がロープに接着し、いわゆる「3面接着」となり、シーリング材の柔軟な動きや接着力を阻害し、またゴムの配合剤がシーリング材に移行することによる変色および軟化のクレームが発生した。
――シーリング材の接着耐久性に関わる継続的実験
これらの要因を解決するためにポリエチレン発泡体のバックアップ材が開発され、同時に反射ガラスの映像調整を可能とするオプセル付きバックアップ材の開発にまで到達した。
昭和40年代後半から建築物のデザインは、都市景観を重視する傾向となり、反射ガラスに映った映像を都市空間をイメージするオブジェとしてとらえる傾向が進みはじめた。1973(昭和48)年竣工の新宿三井ビル(東京都新宿区)は、反射ガラスが全面に使用された最初の超高層ビルである。ガラスを上部で吊るす工法が採用されており、映像調整に対して強い関心と工夫がなされた。さらに1977(昭和52)年に完成した草月会館(同港区)も、外壁が勅使河原蒼風の「蒼」の字を象徴してブルーの反射ガラスが取り付けられており、このガラスの映像効果の調整技術が一層シビアに求められた。
映像調整の難しさは一通りではなかった。たとえば1984(昭和59)年に完成した大和生命本社ビル(東京都千代田区)は正面が3m×90cmの反射ガラスで覆われたが、日比谷公園の噴水のそばから眺めると、250m離れた地点にある中央合同庁舎ビルの3分の2が堂々と映し出された。そこで現場監督はここを定点と決め、連日朝昼晩の3回ずつ、このビルが歪みなく映っているかどうか双眼鏡で眺め微調整を命じた。観測地点と現場で無線連絡をとり、また現場ではビル内部とゴンドラ上で連絡し合って調整作業を行った。

大和生命ビル
調整用の治具としてガラスを仮固定するピッチシールで施工を行うなど、作業能率と精度をあげるために諸々の工夫がなされたが、やがてオプセル付きバックアップ材工法として確立して特許を取得、全国的にオプセル付きバッカーが拡販されるに至った。
ガラスの固定方法(実用新案)
軟らかい連続気泡体と固めの独立気泡体の2層からなるポリエチレン発泡体を使用するガラスとサッシ間のシール構造である。
この構造では、シーリング材がバックアップ材と接着しないため、地震や台風時にガラスとサッシとの相対変位に対しシーリング材に荷重がかからず、耐久性が飛躍的によくなった。シーリング材との化学反応もなく、変色や接着の低下も生じない。
また、2層からなるポリエチレン発泡体の使用により、ガラスの取り付け角度の微調整もでき、映像調整用バックアップ材として優れている。軽量であるため施工時における作業性も大幅にアップする。
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ガラスの固定方法(実用新案)
アルミサッシにはシーリング材の接着阻害要因となる2次電解着色を施したものがある。こうした部材に対して部分的に接着阻害物質を除去する方法を三菱銀行本店ビル(1978(昭和53)年)の実大実験で経験し竹中工務店技術研究所と共同研究を重ね一応の解決をみたが、翌1979(昭和54)年竣工の第一勧業銀行本店ビル、富国生命本社ビル工事において対応策が完成した。
家庭用ナイロンタワシ(スコッチブライト)でバフ掛けし、壁体本体を損傷することなく被着面の表面を軽く目荒らしすることで、接着が可能となったのである。手作業が1工程増え非能率的な面もあるが、微妙な作業が可能となった。
この除去方法を施工手順に標準化し、現在、JASS8(日本建築学会建築工事標準仕様書第8編防水工事)にも掲載されている。
この工法誕生までの経緯は、完工間近になって発生した全面的な剥離現象に端を発した。手直しを行う一方で綿密な調査と必死の原因追求が行われた結果、金属板の表面に耐候性向上を目的とした新たな加工処理があり、これがシーリング材の接着を阻害する要因であることがわかった。この加工処理剤の撤去は従来のトルエンによる清掃では不可能であり、新しい技法が必要とされた。試行錯誤の結果、ナイロンタワシによる物理的処理方法しかないという結論に達し、この方法を取り入れて無事に完成にこぎつけた。以後、さらに研究を重ねて、金属カーテンウォールのシーリング工事の施工手順にバフ掛けが加えられ、定着するに至った。
JASS8(日本建築学会建築工事標準仕様書・同解説第8編 防水工事)
JASSは日本建築学会が1972(昭和47)年に制定した標準仕様書であり、その目的は施工標準を決め、合理的で経済的な施工を普遍化し、一般建築の質の向上を図ることにある。建築工事1~26の中で防水工事は第8に位置づけられており、種類は次のとおりである。
1節 メンプレン防水工事
2節 ステンレスシート防水工事
3節 ケイ酸質系塗布防水工事
4節 シーリング工事
マスキングテープの耐溶剤性改良にも貢献した。
昭和40~50年代は、シーリング事業の隆盛期に向かうなかで初めて経験するさまざまなトラブルに出会い、解決への努力を続けた時期であった。
そのひとつはシーリング材の剥離現象がマスキングテープに原因したという出来事である。当座の処置としてのバフ掛けが効力を発揮して工事は続けられたが、原因究明を続けた結果、思いもかけなかった事実が判明した。マスキングテープの表面処理に使用されている離型剤がプライマーによって溶かされ、シーリング材の接着面に移行して剥離現象を起こしていたのである。
早速メーカーに接着阻害要因を改良するよう要請し、防水専用のマスキングテープの共同開発に成功した。