MENU

再建への道 C 7-5

マサル・ハイブリッド・ウォール・システム

2003年~2020年⑤

マサルは創業以来、長年にわたってその技術力で、シーリング防水工事の専門会社として大手ゼネコンや設計事務所など顧客からの信頼を得てきた。バブル崩壊後の不況で苦しい時代であっても固定客からの依頼は多く、社員は「待つ営業」で済ませてしまいがちな面もあった。だが、2003年問題によって新築市場が大幅に縮小すると、「待つ営業」ばかりに頼ってはいられない。足で稼ぐ「新規営業」へと、営業体質の転換に挑んだ。

――外壁の美観を守る「3つの技術」

その象徴ともいえるのが、2004(平成16)年7月に提供を開始した「マサル・ハイブリッド・ウォール・システム」である。このシステムは新築工事だけではなく、既存建物の汚れた外壁に対し、高度な技術で補修・改修工事ができる商品だった。苅谷新社長はこの商品を自ら、ゼネコンなどに売り込んだ。

パンフレット表紙

外壁の汚れの原因は、ひとつではない。外壁全体が排気ガスやカビ、藻で汚れてしまうこともあり、目地に充填されているシーリング材に塵や埃が付着して汚れることもある。加えて1997(平成9)年頃までのシーリング材として主流だったシリコーン系シーリング材には、周囲の外壁を汚す弱点があった。静電気による塵の付着に加え、雨が目地を伝って流れる際にシーリング材から成分が溶出し、周辺の石材などを汚染する。とりわけ高層ビルでは雨水が目地を伝って流れ落ち、黒い筋状の「雨筋汚れ」が生じて美観上の大きな問題となっていた。

パンフレット①

「マサル・ハイブリッド・ウォール・システム」はまず建物を調査し、外壁の汚れの原因を診断する。次に汚れの原因や外装材に応じ、複数の技術を使った補修・改修を提供する。技術は大きく3である。第1は、シリコーン系シーリング材の目地などを流れ落ちる汚れた雨水を、外壁に流さない技術。第2は、すでに付着した汚れを除去するクリーニング技術。そして第3は、光触媒などによる超親水性コーティング材を塗装することで、外壁の汚れが自然に分解されたり、そもそも汚れが付着しにくくなったりする、いわばセルフクリーニング技術である。

パンフレット②

パンフレット③

なかでも第1と第3の技術が特徴的だった。

第1の技術に使われたのが、2000(平成12)年にマサルが開発した「水切りゴム」だった。仕組みはシンプルで、縦方向のシーリング目地の下端などに小さなEPDMゴム製の部材を取り付け、目地を伝ってきた雨水の流れを変える。汚れを含んだ雨水を壁面から外側へ導いて落とすことで、雨水がそのまま外壁を伝って流れるのを防ぎ、黒い雨筋が生じるのを抑える発想だった。マサルが水切りゴムを初めて採用したのは2000年、川崎市のNEC玉川ルネッサンスシティ第1期(現・サウスタワー)の新築工事現場だ。その後も、雨筋汚れが問題となる建物で提案を重ね、外壁の美観を維持するための対策として、2026(令和8)年現在まで多くの現場で採用されている。

水切りゴム

NEC1期

・防汚のため水切りゴムを初めて設置した現場。

一方、第3の光触媒を利用した技術は2000年代前半、注目を集めていた。光触媒には、光が当たることで有機物を分解するとともに、表面を水になじみやすい状態にする性質がある。この性質を外壁に利用すれば、付着した汚れを雨水で落とすことができる。マサルは大手メーカー3社と技術的な検討を進め、外壁の防汚対策への活用に取り組んだ。マサルの屋上で光触媒の試験体を作成し、各メーカーごとの評価を行っていた。ただし光触媒コーティングは施工費が高く、汚れの種類によっては十分な効果を発揮しないこともわかってきた。

そこで重要になったのが、特定の材料や工法に頼るのではなく、汚れの原因を見極めて最適な方法を選択するという考え方である。水の流れそのものを変える水切りゴムから、クリーニング、コーティングに至るまで、長年シーリング工事に携わり、外壁の汚れを現場で見続けてきた経験が、外壁の美観を総合的に守る技術へと発展していった。

マサルの軌跡(HISTORY)一覧へ戻る