事業は人なり
1999年度・第44期から2003年度・第48期までの5年間、マサルの粗利益率平均は9.53%、経常利益平均は6700万円という結果だった。しかし、続く2004年度・第49期から2007年度・第52期までの4年間は、粗利益率は平均12.01%、経常利益は平均2億5300万円。V字回復を果たしていた。どん底にいたマサルが改善と改革で得た資金を何に使うつもりか、社員たちは注視しているはずである。
――未来をつくるのは、いつも「人」
もちろん、ふくらんだ有利子負債は減らさなければならない。だが、負債はコツコツと返済すればよい。そして改革で得た原資は、苅谷新社長が就任時に掲げた「優秀な人材の採用と育成」に充てる。何より、社是にある「事業は人なり」へ、忠実に従うことを決めたのである。当時の経営企画室長、山﨑栄一郎の提案でリクルート社と契約し、新卒採用を強化していった。
建設業界、とりわけ専門工事会社は「人が集まりにくい業界」だった。3K(きつい・汚い・危険)のイメージが強く、この頃は現実に残業時間も長かった。だからこそ、マサルは本気で「採用の在り方」を変えようとした。学生への情報発信を積極的に行い、施工技術だけでなく社風や人材育成への考え方、教育制度も含めた会社の魅力を理解してもらう。
2007(平成19)年入社の女性総合職(現・第1営業部課長)と、2008(平成20)年入社の女性総合職(現・第2営業部課長)が、入社の動機について語る。
私は大学が建築関連学科だったのですが、就職時の面接で、他社と比べてマサルは話がしやすい雰囲気だと思いました。実際に入社して、上の人との距離が近く、働きやすい会社だと思っています。今はマサルではサークル活動も盛んなのですが、私は冒険部に入っています。冒険といっても、活動はおもにハイキングです。
現・第1営業部課長
就職活動でさまざまな業界を受けましたが、マサルのアットホームな雰囲気が良いと思いました。上の方々、社長ご自身や有田さんが積極的に話しかけてくださり、堅苦しさを感じなかったことが、入社を決めた要因でした。私は2024(令和6)年に出産して2年間の産休・育休を取り、復帰したばかりです。毎日出社していますが子育て優先の時短勤務で、見積もりや報告書を代わりに作成し、今は課員の〝影武者〟的立場で動いています。
現・第2営業部課長
第2営業部課長の言う「有田さん」は、1992(平成4)年に事務職としてマサルへ入社した有田智賀子(現・株式会社マサルファシリティーズ取締役)だ。有田は現在、マサルグループで唯一の女性役員である。
私が入社した時、女性は事務職だけで結婚までの腰掛けだと思われていました。まだ結婚前だった私に腰掛けの意識はなく女性がやりがいを持って働きつづけられるように、当時経営企画室長をしていた苅谷純会長に、女性も役職につけてもらえないかと相談させていただきました。すると最初は『アシスタントチーフ』という肩書きがつき、しばらくすると男性と変わらず主任や係長といった役職につけるようになりました。これでより強い責任感を持って仕事ができると、初めて役職がついて組織の一員として働けた時はうれしかったです。
現・株式会社マサルファシリティーズ取締役
もっとも、採用を強化すれば人が定着するというものではなかった。厚生労働省の統計資料によれば、2000年代初頭の日本の建設業では女性従業員の割合は15%前後と他業種と比して少なく、さらにこれには事務職なども含まれる。現場の技能職でいえば、3%程度という状況だった。
2006年度・第51期から2018年度・第63期までに入社した女性総合職は11名。このうち2025(令和7)年5月末の時点で在籍しているのは、4名である。残業時間の長さなどを背景に、多くが会社を去っていった。
流れが変わるのは、労働環境の整備が進んだ2019年度・第64期からだった。同年度以降に入社した女性総合職は14名。2025年5月末の時点で、その全員が在籍している。

女性総合職が求人誌「POWER WORK」の表紙を飾った