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試練の時代 C 6-6

不況下でも止めない技術開発③

1995年~2002年⑥

サッシ枠のジョイント目地などに使うシーリング材は、かつてシリコーン系シーリング材(SR-2)が中心だったが、1997(平成9)年以降、変成シリコーン系シーリング材(MS-2)が広く使われるようになった。大手設計事務所が採用したことがきっかけである。

――シーリング材の接着不良との戦い

しかし窓を横に並べてつなげた「横連窓」の上枠どうしのジョイント目地などで、施工後のMS-2が被着面から剥離する現象が起こるようになった。しかも施工直後、シーリング材が硬化する途中で、口を開くように剥離するのである。サッシ枠だけでなく、外壁パネルのシーリングにMS-2を使った場合も剥離が起こる例があった。

当初は現場を調べても、この現象の原因を特定できないことが多かった。そのため、「プライマー(シーリング材を下地に接着させる下塗り材)の塗りむらではないか」といった施工上の問題として処理されることもあった。

現・技術本部長の野口修は、この原因不明の剥離に疑問を抱き、長年にわたって原因を追い続けた。マサルには設備がなかったため、山梨県にあるサンスター技研に出向き、同社の動暴露試験機で検証を行っていったのである。

SR-2、MS-2など異なる種類の材料について、実際の建物で生じる目地の動きを想定しながら接着性能を評価する。新しい材料が登場した場合もカタログだけで判断せず、実際に試験して接着性能を確かめた。検証を重ねるなかで、剥離にはシーリング材の硬化途上における初期接着性能が深く関係していることが見えてきた。

その後、メーカーやゼネコンなども問題解明に関わるようになり、剥離が起こるメカニズムが明らかになっていった。試験機についても、動暴露試験機から、天候に左右されない試験機に変化していった。

シーリング材は硬化が進むにつれ、ゴムとしての弾性と被着面への接着力を徐々に発現させていく。一方、建物のサッシ枠や外壁パネルなどの部品は、日射や気温によって膨張・収縮する。晴天時に直射日光で部品の表面温度が上昇すると、枠やパネルが膨張して目地幅は狭くなる。夕刻や日陰、曇天などによって温度が下がると部品は収縮し、逆に目地幅は広がっていく。シーリング材がまだ十分に硬化していない段階で目地幅が広がると、シーリング材には引張応力がかかる。このとき、引張応力がその時点の接着力を上回れば、シーリング材は被着面から剥がれてしまう。

これが「シーリング材の初期接着不良」と呼んでいる剥離現象の基本的なメカニズムである。

原因が分かっても、マサル自身がシーリング材やプライマーを製造しているわけではない。そこで重要になったのが、材料メーカーへの試験機の開発と試験方法の評価とその検証を行っていった。野口はシーカ、サンスター技研、セメダイン、コニシといった各社に足を運び、試験方法の条件を決めていき、評価していった。新しいプライマーができればマサル側でも試験し、さらに実際の現場で使用して結果を検証する。問題があれば再びメーカーにフィードバックする——そうした作業を繰り返した。

2014(平成26)年に台風が相次いだ際には、マサルに漏水修理の依頼が約300件寄せられた。ISO9001(品質マネジメントシステムの国際規格)関連のクレーム報告でも、目地からの漏水は大きな課題であり続けた。この問題を解消できればクレーム件数を大幅に減らせる。マサルはそう考え、さらに地道な検証を続けたのである。

そして評価検証を重ねた結果、2015(平成27)年からマサルは新しいプライマーを標準使用するようになった。その後もメーカーとともに改良と検証を重ね、剥離事故は2026(令和8)年現在、「ほとんどない」と言えるまでになった。

こうした取り組みの成果は、メーカーによる製品改良を通じて広く普及し、いまでは多くの現場で当たり前のように使われる技術となっている。表立ってマサルの名前が残るものではないが、野口は「一番助かったのは施工店だと思います。剥離も事故も激減していますから」と語る。この取り組みは、マサルの技術に対する姿勢を象徴する一例といえる。

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