MENU

再建への道 C 7-11

営業部制への移行

2003年~2020年⑪

2011(平成23)年3月11日午後2時46分、三陸沖を震源とするマグニチュード9.0 の巨大地震が発生した。東日本大震災である。地震に伴う大津波は東北地方の太平洋沿岸を中心に壊滅的な被害をもたらし、福島第一原子力発電所の事故を引き起こした。震災関連死を含め死者・行方不明者は、あわせて2万2000人にのぼった。

――「変わり続ける」会社であるために

建設業界では、道路、港湾、建物などの復旧・復興工事が急増する一方、資材不足と価格高騰、技能労働者の不足が深刻化した。同時に、耐震化や防災、企業の事業継続計画(BCP)の重要性が、あらためて社会全体に問い直される契機ともなった。

事業継続計画(BCP)

企業が自然災害、大火災、テロ攻撃などの緊急事態に遭遇した場合において、事業資産の損害を最小限にとどめつつ、中核となる事業の継続あるいは早期復旧を可能とするために、平常時に行うべき活動や緊急時における事業継続のための方法、手段などを取り決めておく計画を指す。

中小企業庁「中小企業BCP策定運用指針」

大震災以前から、マサルは建築市場に起こりつつある変化を感じ取っていた。

高度経済成長期やバブル期には、建物を「壊して建てる」ことが都市発展の象徴だった。その「スクラップ&ビルド」の時代から、既存建築物を維持・改修しながら長く使う「リニューアル」の時代へ――。潮目は、確実に変わりつつあった。事実、マサルが受注する新築工事は減少傾向にあり、外壁改修、防水更新、漏水対策、長寿命化といった、建物を維持するための改修需要は年々増加していた。

当時のマサルは、社内に「シーリング・防水事業部」と「リニューアル事業部」を並立させていた。工種ごとに専門性を高めるうえで、この体制は高度成長期には合理的なものだった。しかし部署間に縦割りを生みやすく、市場構造の変化とともに、その限界が見え始める。現実の顧客ニーズは、もはや〝新築か改修か〟という物差しだけでは測れなくなっていた。建物全体をどう維持するか。どのタイミングで修繕を施すか。長期的な資産価値をどう守るか。施主が求めていたのは「工種別の専門会社」ではなく、「建物全体について相談できる存在」だったのである。

2011年初頭、マサルは大きな組織改革を決議する。新築部門とリニューアル部門を統合し、営業先別の「営業部制」へ移行するという改革である。市場が成熟するなか、問われるのは「それぞれの顧客に何を提案するか」。だからこそ、〝顧客・市場中心〟の組織へと、自らを変える必要があった。

営業担当者が施主やゼネコンの窓口となり、新築・改修を横断して営業を行う。必要に応じて技術部門や施工部門が連携し、単なる組織再編ではなく、建物全体の課題解決にあたっていった。

とはいえ長年続いた体制を変えることへの戸惑いが、社内になかったわけではない。体制の移行を目前に控えた3月、東日本大震災が起こった。

震災後のマサルは、被災地域への対応と顧客支援に追われた。だがその渦中で、組織を越えた連携が自然と生まれていく。新築も改修も関係ない。部署の垣根も関係ない。「今、必要なことをやる」――社員たちは、顧客対応や現場支援へと奔走した。部門を越えて動いた社員たちは、組織の壁を越えたほうが会社は強いという実感を得た。

そして2011年4月、マサルは正式に「営業部制」へと移行する。

時代が変われば、市場も変わる。市場が変われば、組織も変わらなければならない。今までのやり方に固執するのではなく、「変わり続ける会社」であろうとする――その姿勢が、マサルに根づいていった。

マサルの軌跡(HISTORY)一覧へ戻る