時代のニーズを捉える③
昭和60年代はシーリングの工事が始まって既に30年を経過し、既存建物のジョイントに充填されたシーリング材は、地震や温度変化、大気中のオゾンや紫外線による経年劣化が著しく現れてきた。
――リニューアル工事
シーリング材の劣化は、防水性能を低下させ建物の耐久性に影響を及ぼす。特に初期段階のポリサルファイド系のシーリング材は劣化が著しく、補修の必要性が出てきた。かつて新築に携わった数々のビルがリニューアルの時期を迎え、再びマサルの活躍が期待される時代が到来したのである。以下、施工実績を挙げながら紹介してゆきたい。
三井霞が関ビルは新築工事に参加して大飛躍をもたらした記念すべきビルだが、このビルも1989(平成元)年、竣工後21年目を迎えリニューアル工事が行われた。マサルはこの工事に参加し、約3年半かけて延べ8万mのシーリング工事を完成させた。
ビルのシーリングの耐用年数はおおよそ10年が目安である。1980(昭和55)年、築後9年を経た朝日東海ビル(東京都千代田区)がその時期となり、ガラスとサッシのとり合い部分1万m、パネル目地約1万2,000mを信越化学工業(株)製の2成分形シリコーンを使用し、ブリッジ工法で施工した。
一般にリニューアル工事というのは新築の場合と違って、建物が使用された状態で行われるため、さまざまな制約が伴う。居住者に危険および不便さを与えない、プライバシーに触れないなど、細心の注意が必要である。また建物の立地条件によっては足場を組むことができないという問題もある。さらには、オーナー、テナントなどとの絡みも出てくることもある。
この建物は直接幹線道路に面しており、さらに東京駅近くの線路際に立地していることもあって、作業は安全性を最優先に細心の注意を払って行われた。
また、このビルには材料メーカーの信越化学工業(株)本社が入居しており、自社商品の実地使用状況を見学しようと社員たちが窓越しに居並び、作業員たちはずいぶん緊張してしまったという。
事務所ビルとまた違った難しさのあるのがホテルのリニューアル工事である。快適さを売り物とするホテルでは宿泊客に絶対に迷惑がかからないように工事を進めることが第一条件となる。
1984(昭和59)~1985(昭和60)年に施工した京王プラザホテルはPC板の目地シーリングのリニューアル工事を施工したが、宿泊客に気遣って作業時間は午前10時のチェックアウトから午後3時のチェックインまでの短時間内に限定され、作業員は昼食時間をずらして作業を行った。また、たとえ窓越しであっても室内に視線を向けないように心掛けなければならず、けっこう神経が疲れる仕事であったという。

京王プラザホテル
大々規模なリニューアル工事で記録に残るのが大石寺正本堂である。この建物は新築時に職方たちが大変苦労したエピソードが語り伝えられているが、1986(昭和61)年~1989(平成元)年、正本堂および周辺建物の総合的外装改修を請け負った。最盛期には30~40人がかりで約8カ月間、売上高4~5億円という膨大な工事であった。
まず60年、4人で10日間を要した調査・診断を行い、この報告書に基づいて発注を受け、翌年には改修工事に着手した。
工事は正本堂だけでなく周辺の石造りの建物すべての目地のシーリング材を打ち替えた。周辺建物には直径5mの大理石造りの柱が約30本、3mものが約40本も立っており、これらも含めて総延長数万mにも及ぶ目地のシーリング材を打ち替えた。分量の多さもさることながら、正本堂の外壁は斜めにねじれたデザインが施されており、ここの部分の工事には独自の苦心があった。斜めの壁では頂上からゴンドラを吊るすことは不可能である。そこでゴンドラにタイヤを取り付け、斜めに這って移動できるように工夫改良した。
シーリング工事が終了した段階で外壁全体を水洗いした。正面のメタル扉はブラスト工法で塗装材を剥がし、下地をつくってから塗装のやり直しを行った。
特に大がかりだったのが傾斜屋根であった。ここは約3.5m×7mの黒色アルキャストの瓦が重なっていて、この重なり部分を2成分形シリコーンで打ち替えた。工期は約50 日間。折しも季節は6~8月の夏の真っ盛りである。その作業環境の厳しさは新築時と同様で、太陽は容赦なく屋根に照りつけた。両端の急勾配の部分は特に危険が伴い作業が難航した。資材はすべて手渡しで屋根の上まで運び上げた。
バスを連ねて引きもきらず訪れる参詣の人びとに心を配りながら行ったリニューアル工事であったという。
1991(平成3)~1992(平成4)年にかけてプレスセンタービル(東京都千代田区)のシーリング工事と屋上の防水工事を行った。このビルは9階建てで比較的規模は小さいが特殊な外装デザインのため、工期は12~13人がかりで4カ月という長期間を要した。というのはその外装は、厚さ7cmくらいの磁器タイルを馬踏目地に張り、35mmの深目地を切っている。この深い目地の古いシーリング材を取り除く作業はすべて手作業に頼るほかなく、多大な時間を要したのであった。

プレスセンタービル
マンションのリニューアル工事は、居住している住民の安全性を第一に考えて工事を進めなければならない。1996(平成8)年に施工したパークサイドウィングス(東京都中央区)はSRC造、地下2階、地上14階、塔屋1階という大型賃貸マンションで、約250所帯が居住している。3カ月をかけた調査の結果、全面的なリフレッシュが必要と診断された。
枠組み足場を設置してネットにより養生し、住民の安全性を確保したうえで、大規模修繕工事を開始した。外壁タイルのヒビ割れや剥落防止に関する工事を主として、外壁タイルの打継目地、サッシまわり、屋根、避難用ハッチ等々のシーリング、あるいはバルコニーや笠木等の塗装など、4カ月間を費やして徹底的にリニューアルをした。最後に外壁やバルコニーを洗浄し、あたかも新築同様に仕上げてたいへん住みやすい環境になった。

パークサイドウィングス