事業分野拡大への取り組み②
前編に引き続き、この時期に開発された外壁のリニューアル技術について紹介してゆきたい。
――外壁のリニューアル技術の開発・後編
建物の仕上材としての磁器タイルは経年変化とともに剥落事故につながる危険性がある。これを防止する方法として、裏面にネットを付着させることでもし剥離しても落下しないというタイルを考案。ネットクロスユニット工法として、新築、補修あらゆる分野で実用化され、将来性が期待された。

ネットクロスユニット工法
磁器タイルを使用した外壁において、経年変化によるタイルの剥落事故を防止する工法が開発された。これはタイル表面に剥落防止用ガラス繊維の不織布を貼り、その上にポリエステル樹脂を塗って外観がまったく異質に見えないように仕上げる工法である。
1994(平成6)年から始まった三田国際ビル(東京都港区)の改修工事で、この工法を導入し実用化した。このビルは、1974(昭和49)年の竣工から10年目を迎えた1984(昭和59)年に調査・診断し報告書を作成、1990(平成2)年にPC板目地とガラスサッシの取り合い目地のシーリング材打ち替え工事を行ったが、仮設ゴンドラ9台で約10カ月、使用した材料は約8トンという大規模工事であった。1994(平成6)年から開始された今回の工事は、外部PC板の打ち込みタイル面ほかのライニング工事(ネオタイリング工法)およびシーリング材打ち替え工事と継続して外壁補修工事を行い、1997年(平成9年)に完成した。

三田国際ビル
従来、仮設ゴンドラは屋上からロープで単体を吊り降ろし、外壁面に沿って上下に移動するものであった。ところがここに全く発想を転換し、ゴンドラどうしを横につなぎ合わせて、建物全体を鉢巻きするような形でめぐらせるワークステーション(吊り足場)が誕生した。従来のゴンドラが上下移動のため工事中に各階に影響を及ぼしたのに対して、このワークステーションは各階ごとに工事を完成させていくことができるため、リニューアル工事には大きな利点がある。移動はコンピュータ操作で自由に一気に動かすことができ、ゴンドラ自体も箱状であるため全天候型となっている。
この初使用は芝グランドホテルでの外装改修工事であった。次いで京王プラザホテルでも一部使用されたが、本格的な使用は1994(平成6)年、東京海上火災本社ビル(東京都千代田区)のリニューアル工事からである。改良が進めば作業環境が大幅に改善され、作業効率のアップにもつながっていくものと期待された。

各階層に分けて改修工事が行われた東京海上火災本社ビル
前述した通り、昭和50年代には時期尚早で冬眠状態にあった超速硬化タイプの防水剤「リムスプレー」が、住宅・都市整備公団(現・都市再生機構)のリニューアル工事に伴い、歩行者の多い集合住宅の共用の廊下や階段室などに最適な工法として再び脚光を浴びはじめた。前段の投資がこの時期になってよみがえったのである。
超速硬化ウレタンスプレー工法の展開は、硬化速度に加えて、防水性はもとより美観性、遮音性、耐摩耗性等にすぐれた諸性能から各分野に拡大されていくものと予想され、マサルでは力を入れていく分野として位置づけられた。たとえば大学病院の動物実験室などにも適用され、床、壁、天井を「リムスプレー」ですべすべに覆い尽くすことも行われている(東海大学付属病院、神奈川県伊勢原市)。駅舎のコンコースなど人が引きも切らず歩行する場所にも最適で、1990(平成2)年、JR四谷駅の階段の踊り場に施工したが、6年後の時点でも全く損傷は見られなかった。大手ゼネコンの方々が耐摩耗性の観察を行っているそうである。変わったところの施工実績では税関の燻蒸倉庫がある。土木関係への進出が期待され、半地下式の道路の擁壁や地下に埋設されるボックスカルバートの周囲の防水などをはじめ、適用分野は果てしなく広がってゆくことが予想された。

階段室の「リムスプレー」吹き付け作業

工事完了