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100年カンパニーへ C 8-3

奨学金代理返済支援制度

2020~➂

社員から選ばれる会社になるため、マサルが拡充した人的投資のひとつに、「奨学金代理返済支援制度」がある。

――「人に投資する会社」であること

2020年代、大学進学率の上昇とともに、奨学金を利用して大学へ通う学生が増えていた。奨学金は、国や地方自治体、日本学生支援機構(JASSO)、大学などが、学生に学費を給付または貸与する制度である。返済不要の給付型に対し、貸与型は卒業後に返済しなければならない。2022年度には、JASSOの貸与奨学金利用者は113万人に達した。高等教育機関で学ぶ学生365万人の31.0%、実に約3.2人に1人が利用していたことになる。これに地方公共団体、民間団体、学校からの奨学金受給者を加えると、50%を超える状況だ。貸与型を利用した学生は、大学を卒業すると同時に、数百万円単位の負債を抱える新社会人となった。

若手社会人にとって、奨学金の長期返済は重い。結婚や住宅取得の可能性を狭め、将来への不安につながった。奨学金の返済が社会問題として語られるなか、2024(令和6)年、マサルの経営陣に「奨学金代理返済支援制度」を創設してはどうかという提案が出された。2003(平成15)年に始まった「提案制度」に基づいて寄せられた、複数社員からの声だった。

提案は、「若手社員が安心して働き続けることができる環境」をつくるため、マサルが社員に代わって奨学金の一部を返済する制度を求めるものだった。会長の苅谷純と社長の勝又健は、ひと目見て非常によい案だと思ったという。

当時、企業が社員の奨学金返済を肩代わりする仕組みは、決して珍しいものではなくなっていた。JASSOが2021(令和3)年4月に、企業から機構へ直接送金できる「代理返還制度」を整えると、導入企業は急速に増えていった。だが、マサルの経営規模で導入するのは、簡単なことではない。検討が繰り返され、最終的に提案は採用されることになった。

採用の理由は、何より「若い社員の負担を少しでも減らせること」である。加えて、職場環境の改善を通じて「新入社員の採用に有利になること」、「若手社員の長期雇用につながること」も期待された。

トップダウンではなく、社員発信の提案が制度になる、ここにマサルらしさがあった。長年続けられてきたボトムアップの文化が、確実に根付いていた証でもあった。

もっとも、この制度には慎重な設計が求められた。マサル本体が単純に奨学金の返済を代行すれば、社内に「制度利用者だけが得をする」という不公平感が生まれかねない。マサルの負担が増えることも課題であった。

そこで考えられたのが、マサルとは別法人である株式会社苅谷(創業家の資産管理会社)の資産を活用する仕組みである。株式会社苅谷から資金を提供することで、マサル本体に直接の損失が生じない形で制度を整えた。制度の対象者と非対象者の間に過度な不公平感が生まれる心配も、解消されていった。

「奨学金代理返済支援制度」は、2025(令和7)年4月から運用を始めた。2026(令和8)年現在、利用者は8名(一部は開始時期が異なる)である。

人数だけを見れば、大規模な制度ではない。しかし、その意味は小さくなかった。建設業界には、依然として「厳しい業界」というイメージが根強く残る。だからこそ、「人に投資する会社」であることを、具体的な制度の形で示すことに大きな意味があった。

社会は変わる。若者の悩みも変わる。働き方も変わる。ならば「事業は人なり」という理念も、時代に合わせて形を変えていかなければならない。奨学金代理返済支援制度は、単なる福利厚生ではない。「人を守る」という、マサルの強い意思表示だったのである。

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