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100年カンパニーへ C 8-2

選ばれる会社の仕組みづくり

2020~➁

新社長の勝又健は、前社長の苅谷純から、ふたつの考え方を引き継いだ。

――イノベーションの推進

ひとつは、現場第一の考え方だった。マサルの仕事は、最終的に現場で形になる。現場で安全と品質が守られ、顧客に信頼されなければ意味がない。現場を回り、社員や協力会社の声を自ら聞く姿勢を、勝又も大切に継承した。

もうひとつは、社是の最初に掲げられた「事業は人なり」という考え方だった。技術も品質も、顧客からの信頼も、社員や協力会社の技能者たち、人の力があってこそ成り立つ。マサルがこれまで厳しい時代を乗り越えられたのは、人を守り、人に投資してきたからだ。

そして勝又が社長就任後、最も力を入れたのが、「社員からも、協力会社からも選ばれる会社づくり」である。

かつて日本には、会社が人を選ぶ時代があった。しかし2020年代は、人が会社を選ぶ時代がきていた。社員を支える環境が整った、働きやすい会社でなければ、未来に向けて成長することはできなかった。

マサルは、住宅手当、子ども手当など生活を支える各種手当や、資格取得支援、健康経営など、社員への人的投資を継続し、さらに拡充した。2022(令和4)年に創設されたウェルネス推進室が取り組む健康経営は、社員が病気になる前に予防するという考え方に基づいている。ウェルネス推進室のさまざまな取り組みによって、社員自身が主体的に健康管理へ向き合うようになっていった。その活動により、2023(令和5)年に健康経営優良法人として認定された。

健康経営優良法人

従業員の健康管理や健康づくりを経営的な視点で捉え、戦略的に取り組んでいる企業等を、経済産業省と日本健康会議が顕彰する制度。健康診断の受診率向上、長時間労働の改善、メンタルヘルス対策、働きやすい職場環境の整備など、従業員の健康保持・増進に向けた取り組みが評価の対象となる。

勝又は2020年代以降、建設業界の人手不足がさらに進むと考えていた。マサルにとって、人は〝人財〟である。その人財を守るためにも、社員の働き方を変えて働きやすい会社にし、採用力を高めることが最重要課題だった。

マサルは、教育を仕組み化し、IT化やDX(デジタルトランスフォーメーション)を活用して、一人ひとりの生産性を高めることで、社員の働き方を変えていった。例えば、帰社して行っていた業務をスマートフォンやノートパソコン、ポケットWi-Fiを使って現場で行い、仕事を省力化するなどの変化がIT化であり、建物の維持管理の記録をデータとして蓄積・活用し、そのデータに基づいて顧客へ改修提案のタイミングを提示するなど、ビジネスモデルそのものを変える変化がDXである。

社員ばかりではない。協力会社の技能者たちとの信頼関係も壊してはならなかった。現場に過度な負担をかけないために、利益を確保できる案件を受注し、価格転嫁を進め、適正な取引価格を得ることも、重要な課題だった。

そして勝又は、長期経営計画の大きな柱に「イノベーションの推進」を掲げた。

マサルにとってのイノベーション(新しい技術や考え方を取り入れて新たな価値を生み、大きな変化を実現させること)は、「新技術を開発すること」だけではない。もちろん新しい材料や工法、施工技術の高度化は必須だが、「業務の進め方を変えること」、「デジタル技術を活用すること」、そして「顧客に新たな価値を提案すること」を含めて、イノベーションととらえていた。大量生産から持続可能性へと社会の価値観が変わり、今後も大きな成長を見込めるリニューアル事業では、「顧客への新たな価値の提案力」が強く求められていた。

大切なのは、マサルに合ったやり方で、必要な改革をタイムリーに行うことである。例えば、建物の長寿命化、省エネルギー化、資産価値の向上などの分野では、未来の新しい技術を取り入れることで、大きなコストをかけずに新たな付加価値を生むこともできるはずだった。

マサルにとって「イノベーションの推進」は、まだ道半ばだ。今後も新しい時代へ向かい、休むことなく改革を進めていく。

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