油性コーキング材から弾性シーリング材へ➂
プライマー(下塗り専用材)と部材との対応に関する研究も盛んに行われた。PC工法の防水工事は建方工程の流れの間にさし挟まって行われるため、下地が濡れているからといって工事を見合わせることも先送りすることもできない。下地が濡れていても施工できる方法はないものかと四苦八苦し、各種のプライマーの性能を研究し、解決に導いていった。そうした当時の現場の苦心を、鈴木正博は次のように語っている。
――新製品の導入と現場での試行錯誤
1966(昭和41)年頃、園生団地(千葉県千葉市)の工事をしたときにプライマーに関してトラブルが起きた。屋根PC板の目地に「フジシール」を流したところ多量の気泡が発生してしまった。防水工事の工程が遅れていたので、下地の乾燥を待たずに施工したためである。この対策に「フジシール」を流す前にエポキシ樹脂で下地からの湿気を抑える方法を試みたが、エポキシ樹脂は耐熱的でないため失敗した。そのうちに昭和化工(株)から湿潤下地用の「EPプライマー」が開発された。これはむしろ下地が多少濡れているほうが接着力が強いという、願ってもない性能がある。このお陰で工事が非常にスムーズに進行するようになった。以後、多くの現場でこのプライマーが採用された。
このように、施工条件に適合したプライマーを見つけるために、辛抱強く試行錯誤を繰り返した時代であった。
また、マサルは吹き付けによる防水工事も研究を重ねていた。
昭和化工(株)の製品の「エバータイト」はシリコーン系の撥水性の吹き付け材である。紫外線にも化学薬品にも強く、コンクリートや石材の表面から1~2mm内部にまで浸透する性能をもっていることから、外壁の防水に用いられた。消毒用の手押し噴霧器で吹き付けるのだが、無色透明であるため吹き付けた部分が見えにくく、ムラなく均一に吹き付けるところに工事の難しさがあった。火力発電所工事で盛んに使用されたが、勤労福祉会館(東京都中央区)、防衛庁(同千代田区)、住友銀行(同千代田区)、イースタン観光ビル(同新宿区)、丸栄百貨店(愛知県名古屋市)、新潟県庁舎(新潟県新潟市)等をはじめとして一般ビルにも広く施工された。

「エバータイト」の吹き付け作業
さらに大規模な施設では火力発電所の防水工事も請け負った。
昭和30年代のわが国は怒涛のごとき産業革命期を猛進していた。これに伴う電源開発は、比較的水力資源に恵まれた日本でとられていたそれまでの水力を中心とする発電方式から、火力発電を主とする電源開発方式に転換した。1953(昭和28)年の世界銀行からの借款によって大規模火力発電所の建設に拍車がかかった。マサルはこの建設ラッシュに参画し、経営拡大に大きく寄与するものがあった。
当時の火力発電所の発電機を取り囲む建物は、鉄骨にスレートパネルを張り付けたプレハブ造りで建設されていた。マサルでは、パネル間のジョイントを油性コーキング材で防水する工事、パネル自体の防水性を保持するために「エバータイト」を吹き付ける工事、この2種類の工事を昭和化工(株)の下請けとして受注した。
この方法で施工した火力発電所には、千業火力発電所の1期と2期工事、川崎火力発電所の1~3期工事、君津火力発電所などがある。

千葉火力発電所