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再建への道 C 7-15

WLB(ワーク・ライフ・バランス)改革への取り組み①

2003年~2020年⑮

現場を支える技能者の確保に手を打つことと並行して、マサルはもうひとつの人手不足と向き合っていた。総合職社員、とりわけ若手の離職である。

――「働き方改革で離職者を減らす」

長時間労働。休日出勤。慢性的な残業――。当時の建設業界には「忙しくて当たり前」という空気が根強く残っていた。マサルでも、厳しい職場環境を理由に離職者が相次いだ。せっかく育てた若手社員が、数年で去っていく。それは採用の問題にとどまらず、会社の未来に関わる問題だった。

2015年度・第60期、マサルは「労働環境改善プロジェクト」を始動させた。これがのちにワーク・ライフ・バランス(WLB)改革と呼ばれる取り組みの出発点だった。目指したのは、残業削減だけではない。「社員が長く働き続けられる会社」をつくることである。

まず着手したのが、社員の意識改革だった。理想の働き方を示すスローガンを、全社から募った。

そして、応募から選ばれたのが「身体に休息 仕事に加速 これが賢いマサル流」だった。

2022(令和4)年に設置されたウェルネス推進室の担当者が語る。

「2015(平成27)年に選ばれてから、長きにわたり社内で使われ続けているスローガンです。休息をパフォーマンス向上のための投資と考え、休むことでより生産性を高める。残業が当たり前だった時代の、〝頑張る=長時間労働〟という価値観を引っくり返したかったのではないでしょうか」

次に進めたのは、業務環境そのものの見直しだった。2017年度・第62期、クラウド化を本格的に推進する。社員へ端末を配布し、どこでも業務ができる環境を整えていった。

それまで建設業界では、会社へ戻ってから事務処理をする働き方が一般的だった。現場終了後に帰社し、報告書の作成やメール対応を夜遅くまで続ける。しかしクラウド化によって、現場や外出先からのデータ共有や業務が可能になる。

移動時間の削減、情報共有の迅速化などの小さな改善を積み重ね、総合職社員の負担を軽くしていった。

ユニークな取り組みもあった。「部署別対抗戦」である。残業時間の削減を部署ごとに競い合い、順位に応じて賞金を授与する制度だ。残業削減は、ともすれば〝我慢〟になる。マサルはそれを、チームで競う〝工夫〟に変えた。

2019年度・第64期にはさらに踏み込んで、総合職社員の事務作業を支援する「サポーター人材」を採用した。

マサルはまず、総合職社員の業務を細かく分析した。どの作業にどれだけ時間がかかるのか。何を分担すれば残業削減へ直結するのか。サポーターの人件費と削減できる総合職社員の残業代を比較した結果、サポーターを配置したほうが効果的だという結論に至る。採用したサポーターは3名だった。サポーターが書類整理やデータ入力などを引き受けることで、総合職社員が本来の業務へ集中できる体制が整えられていった。効果は数字に表れた。サポーター採用前の2018(平成30)年度、総合職社員の残業時間は平均44時間。それが2020(令和2)年度には平均36時間まで減少した。

もちろん、建設業において残業ゼロは容易ではない。天候や工程変更など、現場には予測不能な要素が多い。それでもマサルは、「仕方がない」で終わらせなかった。業務を見直し、仕組みを変えた。人を増やし、ITを活用した。「忙しいからこそ変える」という姿勢が、会社全体へ浸透し始めた。

ワーク・ライフ・バランス(WLB)改革への取り組みは、単なる福利厚生施策ではなかった。人材不足の時代を生き抜くための、経営改革そのものとなっていた。

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